血清反応陰性(リウマチ反応陰性)脊椎関節症に関して
血清反応陰性といわれてもピンとくる方は一般の方だけでなく医療関係者でも少ないと思います。血清反応とはいわゆるリウマチ反応のことと考えて良いでしょう。関節リウマチでは80%は陽性にでるリウマチ反応(抗CCP抗体を含む)が陰性でありながら、足や手の関節痛(関節炎)と脊椎を中心に疼痛を訴えながら、血液学的にはCRPなどの急性炎症所見が乏しい事が特徴となります。
血清反応陰性脊椎関節症に含まれる疾患
- 強直性脊椎炎
- 乾癬性関節炎
- 反応性関節炎 ※
- 腸炎関連関節炎
- 分類不能の脊椎関節炎
※当院では感染症などのあとの関節痛、代謝性疾患に関連する関節痛を
reactive arthritis、反応性関節炎と説明している方もいらっしゃいます。
血清反応陰性脊椎関節症の特徴
- 体の軸となる関節の炎症(仙腸関節、脊椎、前胸部)
- 対称性でない末梢(足、手など)の関節炎
- 腱・靭帯・関節包が骨に付着する部分(enthesis)の炎症
- ソーセージのような指
- 爪のpitting scar
- 目のぶどう膜炎
- 皮膚症状 など
この病気の状態は、診断に専門的な知識が必要なこと(整形外科的にもすこし特殊な手技を必要)、血液検査では異常がでにくいこと、訴えが腰痛や胸の痛みなどいわゆる不定愁訴ととらわれてしまうことがあり、また比較的症状が軽い方も多いと思われ、見過ごされている方がかなりいると考えられています。
教科書的には人口の2%が白血球の型のひとつであるHLA-B27と関連しているとの外国のデータがありますが、少なくとも山梨県ではHLAと関連している方も少なく当院での発見頻度は、関節リウマチより少ないと思われますが決して稀な病気ではありません。
血清反応陰性脊椎関節症は、炎症が強くレントゲンでも骨の病変がすすむと節のある竹のようにかたまってしまい前屈ができなくなります。
また、疼痛が強いにも関わらず気のせいといわれたりすることで大変ストレスを感じる方が多いと思います。
さらには近年の線維筋痛症と診断される方の中にこの疾患をきっちり評価されずに“誤診”されている方を見うけます。もちろんいわゆる線維筋痛様症候(fibromyalgia-like symptom)がこの病気の訴えであることは当然ですが、抗TNFα抗体などの有効なこの疾患と線維筋痛症は区別されなくてはなりません。
画像的にはMRIだけでなく、自費診療(がん以外の保険適応がない)ですが、病気の診断に大変有用なPET検査を積極的にお勧めしています。
このPET検査は、別に説明しているリウマチ性多発性筋痛症候群におけるがんの合併の有無の評価、関節周辺の病変の評価に有用でもあり、山梨PET画像診断クリニックにて実施可能です。
自費診療(6万円から10万円程度)となりますが、是非お願いしたい検査です。
治療は様々なアプローチがありますが疼痛が強い場合は生物学的製剤が有効ですのでご本人の病態を適切に判断して治療を行います。軽い末梢関節炎にはサラゾスルファピリジンが有効ですが関節リウマチに使うときの3倍程度必要なことが多いと考えます。
専門性の高い順天堂大学整形外科、篠ノ井総合病院のリウマチセンターなどでの診察もお勧めします。