マチコレ!メディカル・コラム@山梨
第2回 インフルエンザのワクチンって有効なの?
現在のインフルエンザワクチンの有効性は大流行の予防と予防接種を受けた人の重症化(肺炎や小児の髄膜炎など)の予防に目的があり予防接種でインフルエンザにかからなくなるということはありません。
予防接種は、人間の体が一度経験したことのある物質(抗原)に対してその侵入を検知して、急激な症状をおこすことなく抗体などを介した反応によってその病原菌を排除してくれる、免疫というシステムにより成立します。
自然界で人間のからだは一度接触して経験したことのあるものを免疫的に記憶しているため、二度目に抗原の侵入を受けると抗体などにより感染を予防できるのです。
その記憶の中心となるのがリンパ球のT細胞というものであり抗体を産生するのがB細胞です。インフルエンザは変異の多いウイルスですので毎年流行予測を全世界的に実施、そのデータに基づき各国の流行予想をたてワクチンを作成します。というのも、1972年からインフルエンザワクチンの毒性を軽減するためにウイルス全粒子に対する抗体ではなくてその一部分を抗原とするワクチンを作成しているため、安全性はきわめて高いのですが有効性がやや劣るのです。
じつは記憶の中心であるT細胞には刺激が到達しないで、B細胞のみが抗体の産生をおこなうため接種した効果は限定されてしまうのです。
つまり毎年の予想が当たらないと全く意味がなくなるのですが、最近の全世界的監視による予測はかなり正確ですので予防接種の有効性が発揮されることが期待できます。
今後T細胞に対して免疫刺激が到達する経鼻投与もしくは免疫を高める工夫を凝らした新しいワクチンが作られてくれば予防効果が上がります。さらに今後あらたに流行が予想されたときの新型インフルエンザのワクチンは、当然その新型に対し有効ですので積極的集団接種が必要ですし、さらにはその事態に慌てず接種をうける習慣をつけるためにもワクチンを毎年流行のまえに接種されることを勧めます。
2011年12月28日発行「マチコレ!1月号」掲載