マチコレ!メディカル・コラム@山梨
第4回 15年後には破壊のない世界を
関節リウマチは自分を守る免疫が関節の中にある滑膜という部分を攻撃することで炎症が起こり、その関節組織や骨の破壊を引き起こす原因不明の病気です。類似する病気を含めれば全人口の1%程度の方がかかります。以前は発症して10年程度で過半数の方が寝たきりなど機能障害をきたし、寿命も10歳以上短くなる難病でした。
しかし、過去15年、治療方法が劇的に進化、夢の新薬といわれた生物学的製剤などを早期より適切に使用することで関節破壊のない機能障害を引き起こさない“寛解”状態となる治療方針が確立しました。
当院でもこの生物学的製剤とリウマチの基本治療薬であるメソトレキセートおよび免疫抑制剤を駆使して早期に治療を行い、継続受診されている方たちは普通の生活ができています。
生物学的製剤は全世界において全医薬品のなかで売り上げトップ10に3種類入るほど汎用され、値段も高額ですが有用性が高くさらに開発が進んでいます。副作用も数多く想定されているものの、ほとんどの方に安全に投与が可能となっています。
もっともメソトレキセートおよび免疫抑制剤を適切に使用すれば関節破壊が全くない方も多く、当院では約1200名の関節リウマチ疾患の方の中で、半分以上の方は生物学的製剤を使わずに関節破壊が抑制されています。関節破壊がすでに起き、関節変形が気になる方には、専門整形外科医師との連携のもとに関節破壊を手術的に修復して生活の質を改善することができます。
現在の医療の進歩が一番顕著な分野であるこの病気の問題点は、早期に診断する難しさにあります。当院や山梨県立中央病院が中心となり、関節痛やこわばりのある方を速やかに専門的な知識のあるリウマチ財団登録医師が診察、鑑別をすることで、さらに多くの方により適切な治療を導入できるよう診療体制を整えています。
検診でのリウマチ反応の異常や関節痛、朝のこわばりのあるかたは是非、専門のリウマチ財団登録医のいる医療機関受診をお勧めします。
2012年6月28日発行「マチコレ!7月号」掲載