マチコレ!メディカル・コラム@山梨
第5回 歯周病が原因となる病気
感染症という言葉はよく耳にすることがあると思います。はしかやAIDSはウイルス感染症ですし肺炎などに抗生物質を使うのは原因が細菌感染であるからですよね。
では、私たち日本人に一番流行っている感染症はなんだかご存知でしょうか。インフルエンザ?結核?いえ、日本人の少なくとも半分の人が罹患している病気、それが歯周病です。とおりが良い名前で言うと歯槽膿漏ですが、歯と歯茎のあいだに歯垢がたまることでそこにいる細菌、歯垢1mgに1億もの菌がいるそうですが、歯周病菌が増殖することで、その歯をいためるばかりでなく、歯茎に炎症を起こしその結果、歯が生えている骨にまで悪影響を及ぼす病気です。
歯磨きや歯茎のマッサージなどを歯科の先生が指導されるのも虫歯予防だけでなくこの歯周病の予防のためですが、あくまでも歯周病菌という細菌があることで、歯茎が赤く腫れあがり、歯を支持する組織が破壊してくるわけです。
この歯周病が最近、糖尿病や高脂血症、低出生体重と関連しているということはわかってきたのですが、さらに当クリニックの専門である関節リウマチに関しても歯周病が悪化すると症状が悪くなることが分かってきました。それどころか、この歯周病菌がもつ物質がリウマチの症状を引き起こす可能性まで証明されてしまったのです。ほかの糖尿病などと違って、歯周病菌の代表であるジンジバリス菌だけが産生する物質そのものがリウマチの発症に関連することもここ数年で明らかになりました。
そもそも関節リウマチは病気になりやすい遺伝的な要因が60%くらいあり、それに加えて環境的な因子、そのひとつがタバコであることが分かっていましたが、それに劣らないくらい歯周病も原因と配慮しなくてはなりません。もちろん歯周病は細菌感染症ですので適切な治療を早いうちからおこない、定期的チェックをおこなうことで悪化しません。
内科検診などで健康状態を評価するだけでなく自分の歯茎の状態、歯周病の有無を歯科医師と十分に相談することも全身的な病気を引き起こさないために大切なことです。是非歯医者さんに定期的に受診する習慣を身につけましょう。
2012年9月28日発行「マチコレ!10月号」掲載